JR嵯峨野線で京都駅から嵯峨嵐山方面へ一駅のところに「梅小路京都西駅」という駅があります。この駅は、人気の京都水族館や京都鉄道博物館へのアクセスのために2019年3月に出来た駅です。これら人気のスポットは梅小路公園の中にあります。この梅小路公園は、京都駅から徒歩15分という都会の真ん中にありながら、びっくりするぐらい緑にあふれています。
この公園に、まるで一幅の絵のように美しい庭園と、太古の風景を彷彿とさせる原始的な森があることは京都市民にも意外と知られていません。
今回は梅小路公園のこの二つのスポットのうち、「朱雀の庭」という見事な庭園をご紹介します。
梅小路公園の場所
梅小路公園の行き方
電車で
・JR嵯峨野線
「梅小路京都西駅」下車すぐ
「京都駅」(JR,地下鉄・近鉄)
中央口より塩小路通を西へ徒歩15分
バスで
「七条大宮・京都水族館前」
各停留所から徒歩すぐ
・京阪京都交通バス
「梅小路公園前」
「七条大宮・京都水族館前」
各停留所からすぐ
それぞれの詳細は、梅小路公園の公式サイトでご確認ください。
梅小路公園とは
梅小路公園は、市街地の中心にありながら、人が緑と花で憩える空間として、また災害時には市民が避難できる場所として1995年から開園している、面積13.7haの都市公園です。公園内には広々とした「芝生広場」、水と親しめる「河原遊び場」、イベントが開催される「七条入口広場」などがあります。また、有料施設として、平安建都1200年を記念して創設された日本庭園「朱雀の森」や京都で初めての復元型ビオトープ「いのちの森」、京都市電として初めて導入された車両が走る「チンチン電車」、レストランや多目的に利用できる貸室のある「緑の館」があります。
さらに、2012年3月に京都市初の本格的な水族館「京都市水族館」がオープンした他、2016年4月には、日本最大級の鉄道博物館「京都鉄道博物館」もオープンし、京都でも有数の観光スポットの一つとなりました。
注)写真は七条通から梅小路公園への入口です。最寄りの梅小路京都西駅から公園へ行く際には、この入口は通りません
梅小路京都西駅は2019年3月に出来た新しい駅です。梅小路公園は、広大な広場にたくさんの大型遊具もあり、子どもが大喜びする公園です。しかし、この駅が出来るまでは、最寄りの駅は京都駅か隣の丹波口駅で、どちらの駅からも徒歩15分ほどの、子連れにはちょっと行きにくい場所でした。他府県からの観光客にも人気の京都水族館や京都鉄道博物館が園内に出来てから、そのアクセスの悪さが問題視されていました。そんな中、2015年2月に京都市はJR西日本と新駅設置の合意書に署名し、事業化が決定。そして2019年3月に待望の新駅の開業となったのです。
この駅のおかげで本当にアクセスが良くなりました。
梅小路京都西駅の改札を出たら、南東(左斜め前)へ進みます。
スターバックスコーヒーの前を南へ進みます。
正面に見えるのが「緑の館」です。「朱雀の庭」へは「緑の館」から入園します。
「緑の館」の入口です。
「朱雀の庭・いのちの森」へは「緑の館」の2階入り口より入園します。
先ほどの入口を入って左手のこの建物の2階へ上がります。
階段を上がり切ると、入園チケットの販売機があります。大人一人200円です。
チケットを購入し、このゲートを通って入園します。
ゲートの向こうに案内板があります。
庭園内にトイレが無いので、入園する前に緑の館の中のトイレを利用されることをお勧めします。
ゲートを入って「朱雀の庭」へ向かう通路の左手を見ると、一階におしゃれなレストランが。今回は昼食をとってから公園に伺ったので利用しませんでしたが、次回は利用してみたいと思いました。レストランからは庭園の絶景を見ながら食事が出来そうです。
レストランを眺めながら、「朱雀の庭」へ向かいます。
通路を抜けて、すぐ左手には、さっそくこの絶景が広がっています。
緑の館からは想像がつかないぐらい広大で美しい庭園です。
朱雀の庭とは
平安建都1200年を記念し、長い歴史の中で培ってきた京都の作庭技術、技法を結集し、伝統と創生の調和を目指して作庭された平成の日本庭園が「朱雀の庭」です。
この池泉回遊式庭園には、中央の浅池の周囲に築山や滝、野筋や花床などが配置され、歩みにつれて変化する風景は、訪れるたびに新鮮な発見に満ちているそうです。
梅小路公園「朱雀の庭」「いのちの森」パンフレットより抜粋
レストランと反対側には「紅葉渓(もみじだに)」と名付けられた沢山のモミジの木があり、わずかに色づき始めていました。こちらのモミジはイロハモミジ(別名タカオカエデ)と言い、京都の紅葉の名所「高雄」の景色を偲ばせます。
アカマツ林には、コバノミツバツツジやクマザサが広がり、昔の京都の風景を形づくっています。
写真ではわかりにくいですが、水際にススキも色づき、モミジの緑色に秋らしさを添えています。
平清盛公西八条第跡の石碑です。
この石碑から南東側に平家一門の邸宅群「西八条第(にしはちじょうてい)」があり、平清盛公だけでなく他の平家一門もこの地に邸宅を構えていたそうです。
平安末期の中心地だったんですね。
この橋を渡ると「いのちの森」へ行けますが、次回ご紹介します。
先ほどの橋と反対側の、水際へと続く堤のほうへ階段を下りて行きます。
ところどころに大きな石が配置された気持ちの良い遊歩道が続きます。
滝があります。落差6メートル、京都市内にある日本庭園の滝としては最大のものだそうです。
写真の中央右寄りに月の形のフットライトが見えます。
11月中旬から下旬に「紅葉まつり」が行われ、苑内がライトアップされるそうです。
野趣あふれる遊歩道を抜けると…
先ほどまでの日本らしい趣きのある秋の野とはまた違った、現代絵画のように美しい景色が広がります。
黒御影石の上に1㎝だけ水を張り、周囲の景色がよく映り込むように施された「水鏡(みずかがみ)」です。水鏡のある水面の向こう側には先ほどのレストランが見えます。レストランから見た水鏡のある風景もさぞ美しいことでしょう。
少し視線を左に振ると、レストラン横の桟橋まで続く飛び石がありますが、今日は飛び石は渡らずに、来た道を戻り、いのちの森への橋の向かいにあった階段付近まで行きます。
階段を上って、最初に歩いていた庭の外周の遊歩道が見える場所まで戻りました。この辺りは日当たりが良いのか、周辺より一足早くモミジが紅葉していました。
秋の青空にモミジの赤や黄色が映えて一段と美しく見えます。
更に庭の外周を進み、先ほどの紅葉したカエデを見晴らせる場所まで来ました。
この辺りには、低い盛り土でゆるやかな起伏をつけた小丘があり、これを平安時代からの庭園用語で「野筋(のすじ)」と言います。
水が野を分けて流れる地形づくりのことを野筋と言うこともあり、平安時代、宮中では野筋の流れで詩を詠む「曲水の宴」が行われていました。
緑のグラデーションと、ニチニチソウの鮮やかなピンク色がお互いを引き立てあっています。この花床(はなどこ)が水鏡に色鮮やかに浮かびあがり、さながら極楽浄土ような美しさに思わずため息が…
もう少し先へ進むと池に突き出た舞台のような場所があり、そこにはフジバカマの植木鉢がたくさん並んでいました。フジバカマは、花そのものの美しさだけでなく、吸蜜のためたくさんの蝶が集まることでも知られています。フジバカマの花に含まれるピロリジジンアルカロイドの一種が、アサギマダラなど一部の蝶にとっては、雄が雌を誘うフェロモンを作るのに必須の物質だからです。梅小路公園の公式サイトに、10月初旬にこのフジバカマに、何千キロも海を渡る蝶アサギマダラが集まっているという記載がありましたが、私が訪ねた時は、残念ながらミドリヒョウモンという蝶しかいませんでした。それでもこの蝶とフジバカマと水鏡に照り映えるニチニチソウのコラボレーションは、それはそれは美しく夢のような光景でした。
蝶が舞うフジバカマのお寺 革堂行願寺を紹介しています。↓
フジバカマに集まるアサギマダラがいる奥嵯峨のお寺 祇王寺を紹介しています。↓
庭師で森の案内人 三浦豊さんによると、朱雀の庭の「池および、庭の中に設置された小川や滝の水は循環していて、静的な池の水、動的な川の水、コントラストを設けているのが特徴」だそうです。また、「水の流れだけでなく、植えた木々で視界をところどころさえぎって飽きさせない仕掛け」があり、「見えないけれどせせらぎは聞こえるので、ああ、川が流れているんだなあ、とわかる。さらに歩くと視界がひらけて、水の流れそのものが姿を見せるんです」と解説されています。
自然をそのままではなく、かといって自然を殺すでもなく、絶妙な塩梅と計算でつくられる、まさに日本庭園の作庭技術や技法を結集した庭園が、朱雀の庭なのですね。
今回はほんのり色づいたモミジが見られましたが、11月中旬から下旬の「紅葉まつり」の頃には、まさに見ごろを迎えたモミジと水鏡の饗宴が見られ、さらに夜間のライトアップで幻想的な美しい世界を楽しめることと思います。京都駅からでも徒歩15分のお散歩圏内ですので、機会があればぜひ足を運んでみてください。
注)「紅葉まつり」については、梅小路公園の公式サイトより最新の情報をご確認ください。
次回は太古の森を彷彿とさせる「いのちの森」をご紹介します。