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毘沙門堂門跡② ~門跡寺院の風格を湛えた紅葉の名所

京都市中心部から山をひとつ越えるだけで、観光客の混雑もぐんと減る山科は、隠れた紅葉の名所が点在する穴場スポットです。前回は御陵駅から山科疎水沿いの紅葉を堪能しながら毘沙門堂にたどり着きました。今回はいよいよ紅葉の名所、毘沙門堂を巡ります。

 

 

毘沙門堂門跡の場所

https://maps.app.goo.gl/7n8hmZ6zf7MNbdLA6

 

毘沙門堂門跡の行き方

 JR、市営地下鉄東西線京阪電鉄山科駅」より北へ徒歩約20分

山科駅の高架下歩行者通路を通ると、駅北側にスムーズに出ることができます。

 

毘沙門堂門跡の最寄り駅は山科駅なのですが、地下鉄で一つ西側の手前の駅で下車し、山科疎水沿いを散策しながら向かいました。

御陵駅から山科疎水を通り毘沙門堂への道順

 

詳しい行き方は以下でご紹介しています。

 

www.yomurashamrock.me

 

 

毘沙門堂門跡とは

護法山毘沙門堂の創建は古く奈良時代の大宝3(703)年。文武天応の勅願により開かれました。当初、京都の出雲路橋付近(現在の御所北側)にあり「出雲寺」と呼ばれていましたが、後に「毘沙門堂」となります。戦乱や焼失を乗り越えながら、現在の地・山科に再建されたのが寛文5(1665)年。毘沙門堂復興に尽力した天海大僧正とその高弟公海を経て、後西(ごさい)天皇の皇子・公弁法親王が入寺されたことにより「門跡寺院」となり、天台宗京都五箇室門跡の一つとして現在に至ります。

寺院名の由来となるご本尊毘沙門天は、比叡山延暦寺の本尊である薬師如を作った際の余材をもとに伝教大師最澄が刻んだと伝えられています。

七福神の一人でもあり、また四天王の多聞天としても知られる毘沙門天は、今も多くの人々から「毘沙門さん」と呼ばれて篤い信仰を受けています。

17,18世紀の日本建築と風情を今に伝える貴重な本堂や唐門などの歴史的な建物や、桜や紅葉の名所として知られる自然豊かな境内の佳景も見どころです。

 

 

今回のスタートは、山科疎水にかかる安朱橋から参道を進んだ突き進んだあたりの毘沙門堂の入口からです。

11月下旬のこの日は紅葉もだいぶ進んで色鮮やかでした。

 

仁王門

仁王門は急な石段を上った先にそびえる大提灯と阿吽像が目印の本堂の表門です。山科に再建された寛文5年(1665年当時から変わらぬ姿で参拝者を出迎えてくれます。


山腹沿いの急な階段を上り、仁王門にたどり着いて後ろを振り返ると、眼下にダイナミックな紅葉の景色が広がります。

 

本殿

本殿にはご本尊の毘沙門天が祀られています。徳川家寄進により建てられた本殿や唐門は日光東照宮の建築様式を色濃く受け継いでおり、唐破風造の唐門や堂の周囲の透塀など通常の寺院建築にはあまり見られない鮮やかな彩色や装飾も必見です。

画像:毘沙門堂門跡公式サイトより

 

高台弁財天

豊臣秀吉の母・大政所ゆかりの弁財天。大阪城高台寺で祀られたのち、毘沙門堂の地に移されました。庶民福楽を祈る弁天様として親しまれ、不老弁財天とも呼ばれます。

本殿と霊殿をつなぐ渡り廊下から見る、紅葉の錦に囲まれた弁天堂は圧巻の美しさです。

 

霊殿

元禄6(1693)年に宸殿、勅使門などとともに後西天皇から拝領・移築された建物。阿弥陀如来が祀られており、迫力の天井龍図は狩野永叔主信の作とされています。

龍の鋭い目つきや顔つきは、見る角度によって変化します。

画像;毘沙門堂門跡公式サイトより

 

宸殿

元禄6(1693)に移築。宸殿を彩る狩野益信による動く襖絵や円山応挙筆とされる迫力ある鯉の杉戸絵などは毘沙門堂の見どころの一つです。

宸殿襖絵は動く襖絵として有名です。左から右へ歩いていくと描いてある机が向きや大きさを変えたように見えるなど、常に鑑賞者が中心にいるような錯覚に陥る逆遠近法が使われています。

画像:毘沙門堂門跡公式サイトより

 

晩翠園

谷川の水を引いて滝を作った、江戸初期の回遊式庭園です。山裾の木立の枝間は暗く、夜の翠(みどり)を思わせることから「晩翠園」と名付けられたそうです。「心」の裏文字を象った池に、亀島、千鳥石、座禅石などが配置されています。池の周りの草木が四季の風景を彩ります。この日も観音堂の周りをモミジやドウダンツツジなどが色鮮やかに囲み、いつまでも眺めていたい美しさでした。

 

勅使門

御所より移築された檜皮葺の総門です。門主の晋山式(しんざんしき・新たに住職となった僧侶が寺院に初めて入る時に営まれる法要)や天皇行幸など特別な時にのみ用いられます。門につながる石畳の勅使坂は敷き紅葉の名所です。この日は残念ながらまだ敷き紅葉には時期が早かったようですが、勅使門周辺の紅葉は門跡寺院ならではの気品と壮麗さを兼ね備えた圧巻の美しさでした。

 

毘沙門堂のある山科の地は、オーバーツーリズムが問題になっている京都市中心部の喧騒が嘘のような静かな佇まいで、いかにも京都らしい風情のある紅葉が楽しめるスポットでした。

最寄りの山科駅からでも徒歩20分以上と距離があり、山門から急な石段を上らなければならないのでちょっと大変ですが、登り切った所からの絶景を見れば、その大変さも報われた気分になると思います。

私も初めて訪れて知ったのですが、山科疎水沿いの道も毘沙門堂も、地元の方には有名な桜の名所でもあるそうです。

来年の春には是非ともそんな桜の絶景を見に再訪したいと思いました。