京都おすすめ散歩道

定番から穴場まで京都のお散歩コースを地元民の視点からご紹介

等持院 ~歴代足利将軍が眠る古刹

京福電気鉄道は、京都市中心部と嵐山を結ぶことから「嵐電(らんでん)」と呼ばれています。嵐電には京都市中心部から嵐山方面へ向かう「嵐山本線」と、帷子ノ辻駅から北野天満宮の最寄り駅「北野白梅町」へ向かう「北野線」があり、北野白梅町の一つ手前の駅の近くにあるのが、今回ご紹介する等持院です。

いわゆる観光地化された寺院ではありませんが、歴代足利将軍の菩提寺であり、三つの庭園もそれぞれに見事で、見どころがたくさんあります。八月の下旬、芙蓉の花や百日紅が見ごろと思い、訪ねてみました。

 

 

 

等持院の場所

goo.gl

 

等持院の行き方

バスで

 京都市バス10、26系統「等持院南町」下車 徒歩約8分

 京都市バス12,15,50,51,55,59系統、JRバス「立命館大学前」下車 徒歩約10分

 

電車で

 京福電鉄北野線等持院立命館大学衣笠キャンバス前駅」下車 徒歩約5分

 

 

 

今回のスタートは、京福電鉄等持院立命館大学衣笠キャンパス前駅」です。

私にとって、この駅は「北野白梅町の一つ手前の駅」というだけの、地味な存在でしたが、数年前にこの小さな駅がちょっとだけニュースに登場しました。元は近くの等持院にちなんで、駅名も「等持院駅」だったのですが、立命館大学衣笠キャンパスへの最寄り駅であることから、2020年3月20日に現在の「等持院立命館大学衣笠キャンバス前」駅という、とても長い駅名(26文字)に改称され、当時日本で一番長い駅名となりました。

しかしこの9か月後の2021年1月1日に、同駅が日本一になるまで一位であった、富山地方鉄道富山軌道線呉羽線の「富山トヨペット本社前(五福末広町)」停留場(24文字)が、「トヨタモビリティ富山Gスクエア五福前(五福末広町)」停留場(32文字)に改称されたため、同停留場が再び日本一長い駅名となったそうです。せっかく日本一になったのに、残念でしたね。

 

嵐電を降り、駅の東側へ向かいます。早速「立命館大学」への赤い案内板と、小さいですが「等持院」へのグレーの案内板がありました。

こちらのゲートを出て北(左手)へ向かいます。

 

ゲートを出て北を向いたところです。目の前の道を70mほど北へ向かいます。

 

道が二股に分かれていますので、右の道を進みます。

 

右の道を100mほど北へ進みます。

 

100mほど進むと突き当りの道に等持院への案内板が出ています。

案内板に従って東(右手)へ進みます。

 

東を向いたところです。この道を30mほど進みます。

 

30mほど進むと、北(左手)に等持院の総門が見えます。

 

等持院とは

万年山等持院臨済宗天龍寺派の寺院です。もともとは仁和寺の一院でしたが、南北朝時代の暦応4年(1341)、足利尊氏天龍寺の夢窓国師を開山とし、衣笠山の南麓に創建しました。後に尊氏、義詮将軍当時の幕府の地にあった等持寺もこちらに移されて、足利将軍家歴代の菩提所となりました。

応仁の乱などの戦乱や火災に見舞われましたが、豊臣秀吉も、秀頼に建て直させたほど、この寺を重んじられ、現在の建物は江戸時代・文政年間(1818~1830)の建立です。足利歴代の将軍像などが並ぶ霊光殿、夢想国師作として伝えられる庭園、足利尊氏の墓と伝えられる宝篋印塔などもあります。

 

それでは、さっそく総門から等持院に入って行きましょう。

 

総門を入り70mほど北へ進むと、このような門がありますので中へ入ります。

 

マキノ省三先生像

門を入ると、ほどなくこの銅像があります。「マキノ省三先生像」と書かれています。

牧野省三は日本最初の職業的映画監督であり、日本映画の基礎を築いた人物で、昭和32年(1957)「マキノ省三先生顕彰会」によりこの銅像が建立されました。

日活から独立した牧野省三は、この等持院に「等持院撮影所」を設立、それまでの剣劇中心の勧善懲悪ものからストーリーを中心とした人間味のある描写を取り入れたり、新しい撮影技術や編集技術を研究するなど、日本映画の発展に大きく貢献し、「日本映画の父」とも呼ばれています。

ここ等持院には、牧野家のお墓があり、省三を始め、息子など映画一家だった家族の遺骨が納められているそうです。

同じ嵐電沿線では嵐山本線北野線が分岐する帷子ノ辻駅から太秦広隆寺あたりに伸びる「大映通り商店街」は「太秦キネマストリート」をコンセプトに映画をテーマに地域振興に取り組んでいます。かつて太秦の地は、東映、日活、大映、松竹など多くの撮影所で映画が制作され、「日本のハリウッド」とも呼ばれたことは京都でも有名ですが、この等持院にも撮影所があったことは知りませんでした。

 

さらに奥へ進むと、鐘楼があります。

 

そして鐘楼の手前には山門があり、山門脇には百日紅が美しく咲いていました。小さくてわかりにくいですが、右端の木です。

 

さっそく山門から中へ入っていきます。

 

山門をくぐると出迎えてくれるのが庫裏です。

 

庫裏を入ると下駄箱があり、履物を脱いで室内に上がり、こちらで拝観受付をします。

 

受付右手の突き当り、庫裏と方丈(本堂)の境目あたりにあるのが、大きな達磨図(祖師像)です。インパクトのある大きさと言い、ユーモラスな表情といい、天龍寺の庫裏の入口にも同じようなのがあったなあ、と思ったら…等持院天龍寺派の寺院であり、この達磨図は天龍寺派の元管長(管長とは1宗教団体における最高位の宗教指導者の役職のこと)関牧翁老師によるものでした。関牧翁老師は天龍寺で修行している時に、等持院の住職も兼任していたのです。ちなみに天龍寺の庫裏に掲げられた大きな達磨図は、関牧翁老師の弟子であり、関老師から天龍寺管長を継いだ平田晴耕老師によるものです。雰囲気が似ていると思ったら、作者が師弟関係にあったのですね!

 

現在の方丈(本堂)は、元和2年(1616)福島正則妙心寺塔頭海福院に建立し、文政元年(1818)に等持院に移築されたもので、南庭をひかえた広縁を静かに歩むと、鴬張りの音がキュキュっと心地よく響きます。

寺院の「方丈前庭」は、本来儀式を行う白砂敷の広場でしたが、室町時代になって儀式の場を室外から室内に移動し、白砂敷の広場には石組や植栽が設けられるようになったそうです。等持院の方丈の前庭(南庭)も、白砂敷のシンプルな広場に、控えめな石組や植栽が見られますね。

 

霊光殿

方丈の前の庭を通り過ぎ、方丈の奥にあるのが霊光殿です。こちらには、足利尊氏が日頃念持仏として信仰していた利運地蔵尊(伝弘法大師作)を本尊とし、達磨大師と夢窓国師とを左右に、足利歴代の将軍像(5代義量と14代義栄の像を除く)が、徳川家康の像と共にずらりと並びます。その眺めはまさに圧巻ですが、霊光殿内は撮影不可なので、こちらでご紹介できないのが残念です。歴代足利将軍と家康公の像は木像でほぼ等身大。将軍の人となりが想像できる、それぞれの顔立ちがはっきりわかるほどリアルな像なので、独りで見るとちょっと怖いほどでしたが、一つ一つ見比べながら眺めるのもまた興味深いものでした。

 

芙蓉池と心字池

方丈の北側に回ると広がるのが、池泉回遊庭園です。庭園は茶室「清漣亭」と芙蓉池を擁する西庭と、心字池を擁する東庭に分けられ、どちらも京都府の名勝に指定されています。

写真の左奥に見えているのは書院で、その手前に広がるのが芙蓉池を擁する西庭です。

 

 

書院の座敷にはお抹茶席が設けられ、庭園を眺めながらお抹茶をいただくことが出来ます。

 

 

この書院からスリッパに履き替えて、庭園を散策出来ます。

 

書院を出て写真左手の石畳の小道を北へ進むと、写真左奥に見えている茶室に出ます。この茶室は、尊氏公百年忌の長禄元年(1457)に庭園の中に新築された「清漣亭」で、八代将軍義政好みと伝えられています。

 

清漣亭を通り過ぎ、庭園の一番北側の小高い丘から方丈を眺めました。庭園は花木や草木を配し、石組みも変化に富んでいます。初夏はサツキ、七月頃はクチナシの花、そして夏は芙蓉の花などが彩りを添えます。

 

私が訪れた八月下旬は、すでに芙蓉の花の季節は終わりかけで、書院の前に少しだけ白い芙蓉の花が咲いていました。

 

一方、夢想国師作と伝えられる東庭は心字池を取り囲んでいます。池の形が草書体の心の字の形をしていることから心字池と呼ばれています。

芙蓉池のような刈り込みは少なく、平面的な感じがしますが、池泉を中心とした回遊式庭園らしく、一足ごとに景色が変わり、池に映る木々の色も鮮やかで、西庭とはまた違った落ち着いた趣があります。楓の木が少し紅葉して、緑のグラデーションの庭によく映えていました。秋にはさぞかし紅葉が美しいことでしょう。心字池の周りには半夏生もたくさん植わっていて、初夏にも訪れてみたいと思いました。

 

尊氏ノ墓所

方丈北の中央、ちょうど二つの池の真ん中あたりに、足利尊氏の墓とされる宝篋印塔があります。室町幕府を開いた大将軍にしては、意外とこぢんまりとしたお墓です。

 

 

ぐるっと回って、また芙蓉池に戻ってきました。写真中央より少し左奥に小さく写っているのは立命館大学です。昔は衣笠山を借景としていた庭園でしたが、現在は大学の近代的な建物があるため、それの目隠しのために背後の樹木も高く整えられているのだそうです。

 

 

等持院足利将軍家にゆかりが深い古刹で、三つの庭園もそれぞれに見ごたえのある素晴らしいのですが、近隣の北野天満宮金閣寺仁和寺龍安寺などと比べると、知名度は低く、京都人でも訪れる人が多くはない穴場スポットです。四季折々に美しい花木に彩られ、秋の紅葉はことのほか美しいのに、観光客はそんなに多くなく、ゆっくりと紅葉を鑑賞できるようですので、機会があれば是非足をお運びください。

 

周辺の関連スポット

京福電鉄の次の駅は北野天満宮の最寄り駅です。↓

www.yomurashamrock.me

 

桜の名所平野神社

www.yomurashamrock.me

 

同じ天龍寺派の総本山 天龍寺

www.yomurashamrock.me