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松尾大社 ~黄金色に染まる太古の社

観光客であふれる嵐山から阪急嵐山線で一駅の「松尾大社」駅からすぐ近くにある松尾大社。酒造の神様として有名ですが、実は関西でも随一の山吹の名所でもあります。約3000本の山吹が自生する境内はまさに黄金色に染まり、桜とは違う素朴な温かさと華やかさがあります。「桜の次は山吹」ということで、山吹に包まれた松尾大社を訪ねました。

 

 

松尾大社の場所

goo.gl

 

松尾大社の行き方

阪急電車松尾大社」駅下車

JR京都駅→(地下鉄)→四条烏丸→(阪急京都線)→桂→(阪急嵐山線)→松尾大社

所要時間:京都駅から約40分

 

●市バス「松尾大社前」バス停下車

JR京都駅→(市バス 嵐山大覚寺行き)→松尾大社

JR京都駅→(京都バス 苔寺行き)→松尾大社

所要時間:京都駅から約40分

 

松尾大社への詳しい行き方や詳細は下記ブログでもご紹介しています↓

www.yomurashamrock.me

 

www.yomurashamrock.me

 

本日のスタートは阪急「松尾大社駅」を降りてすぐの松尾大社の一の鳥居です。

一の鳥居の右横にある二つのオブジェは、お酒を入れる容器「瓶子(へいし)」をモチーフとして、「お酒の神様」である松尾大社に捧げられたものだそうです。

 

松尾大社とは

松尾大社本殿の背後にある松尾山は、太古の昔から、山頂近くに「磐座(いわくら)」と呼ばれる、神が降臨するという岩があり、この地に住む人々が山の神として崇め、信仰してきました。大宝元年(701年)、京都盆地の西一帯を支配していた秦氏が「磐座」の神霊を勧請し、現在の本殿の場所に社殿を建立したとされています。その後も秦氏(はたうじ)により氏神として奉斎され、平安遷都後は東の賀茂神社賀茂別雷神社上賀茂神社賀茂御祖神社下鴨神社)とともに「東の 厳神、西の猛霊」と並び称され、西の王城鎮護社に位置づけられたました。中世以降は酒の神としても信仰され、現在においても醸造家からの信仰の篤い神社です。
御祭神は大山咋神(おおやまぐいのかみ)と市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)です。大山咋神は、古事記によると山の上部に鎮座されて、山及び山麓一体を支配される神であり、近江の国の比叡山と松尾山を支配される神であったと伝えられます。一方、市杵島姫命は、中津島姫命(なかつしまひめのみこと)の別名で、古事記の記述によると、福岡県の宗像大社に祀られる三女神の一神として古くから海上守護の霊徳を仰がれた神です。おそらく外来民族である秦氏朝鮮半島と交易する関係から、航海の安全を祈って古くから同社に勧請されたと伝えられています。

 

さて、一の鳥居をくぐり中へ入って行きましょう。

入ってすぐ左手の脇道に、さっそく山吹と八重桜のコラボが見られました。この日は4月中旬、ソメイヨシノの時期は終わっていましたが、遅咲きの八重桜は境内でも何本か咲いていました。

 

参道です。松尾大社は嵐山からもほど近いのですが、初詣やお祭りの時期を除き、いつ訪れてもほとんど混んでいません。この日も参道はこんな感じでした。

突き当りに見えている鳥居の後ろに控えているのが松尾山です。訪れるたびに、この山の素朴ながらも人を圧倒するような力強い気配に畏怖の念が湧いてきます。これが太古から続く神の気配というものでしょうか。京の西の端に鎮座するこの山に、都を守護する神を見た昔の人々と心が通じた気がしました。

 

参道を100mほど進むと二の鳥居です。鳥居の上部に榊の小枝を束ねたものがたくさん垂れ下がっています。これを「脇勧請」と言います。穢れ(けがれ)を祓う力があると言われる榊を、原始の神社では境内の大木に吊り下げることによって、神域と人の結界としていて、それが鳥居の始まりと言われています。

 

二の鳥居の下から脇勧請を見上げて写真を撮ってみました。空の青と鳥居の朱色、そして鳥居の下に白い雲という不思議な絵が撮れました。

鳥居に垂れ下がっている榊の束は12個(閏年は13個)。榊の枯れ方によって月々の農作物の出来具合を占ったそうです。榊が完全に枯れると豊作で、一部が枯れ残ると不作。太古の風習を松尾大社ではそのまま伝えていると言われています。

 

楼門です。左右に随神を配置したこの楼門は江戸時代初期の作と言われており、屋根は入母屋造檜皮葺です。高さ約11メートルと大規模なもので、華美な装飾はなく和様系で古式の楼門です。

 

楼門をくぐってすぐ用水路沿いに、ありましたよ!お目当ての山吹が満開です。

満開の山吹が川面にも映り、黄金色にきらめいています。石橋との取り合わせが何とも風流です。

 

 

 

楼門をくぐって右手にあるのが手水舎です。

手水舎にいる動物と言えば、龍が多いようですが、松尾大社では亀です。何だかユーモラスな表情ですね。

 

手水舎の奥から先ほどの石橋を臨んだ景色です。

私の他にも何人か、この山吹を撮影しに来られていました。

 

今度は手水舎の手前、石橋側から見てみると水車があり、これもまたフォトジェニックです。



手水舎と楼門の間あたりに咲いていたのが、白山吹です。境内の庭園内でも咲いているとのことでしたが、こちらでも見つけました。帰宅してから気づいたので、もっとアップで撮影すれば良かった…とちょっと後悔。

 

手水舎から石の階段を数段上がった所の広場の中央にあるのが、拝殿です。入母屋造、檜皮葺の建物で、元禄・寛政期の絵図でも同一の様式で描かれているので、その頃の姿を現在にとどめていると思われます。大祓式のほか、各種神事で使用されます。

訪れたのが午後だったので、拝殿の後ろ(西側)に太陽があり、後光が差しているように見えますね。

 

拝殿の奥にあるのが本殿になりますが、写真は本殿に続く中門です。この奥が本殿で、中門の後ろに本殿の屋根がチラッと見えますね。本殿は外から撮影することが出来ません。本殿は大宝元年(701)、秦忌寸都理(はたのいみきとり)が勅命を奉じて創建以来、皇室や幕府の手で改築され、現在のものは室町初期の応永四年(1397)の建造にかかり、天文11年(1542)大修理を施したものです。

屋根は側面から見ると前後同じ長さに流れており、この形式は「両流造」とも「松尾造」とも称される独特のものです。この本殿は国の重要文化財に指定されています。また本殿につづく釣殿・中門・回廊は、神庫・拝殿・楼門と共に江戸期の建築物で京都府暫定登録文化財に指定されています。

 

本殿の前を北へ向かいます。

本殿右の端、庭園入口の手前にある「神使の庭」です。松尾大社の二つの神の使い、亀と、滝を登る鯉の像(写真右奥)があります。太古、大神様が山城丹波の国を拓くため保津川を遡られる時、急流は鯉、緩やかな流れは亀の背に乗って進まれたと伝えられ、以来亀と鯉は神のお使いとして崇められているそうです。

神使の庭の西側に「霊亀の滝 亀の井 松風苑」の看板があります。本殿と客殿をつなぐ廊下の下をくぐって進みます。

 

廊下の下をくぐった先に、神泉と書かれた「亀の井」があります。

 

酒造家は、この霊水を酒の元水として造り水に混和して用いると腐敗しないと言い、延命長寿、よみがえりの水としても有名です。茶道、書道の用水として活用したり、飲用として地元の方たちが汲みに来られたりしています。

亀の井の奥の坂を上へあがっていくと、「霊亀の滝」があります。

 

「三宮社」と「四大神社」の奥にあるのが「霊亀の滝」です。奥に鳥居が見えていますね。鳥居の更に奥に滝があります。

 

滝の手前の鳥居には「滝御前」と記されています。ご祭神は罔象女神(みずはのめかみ)で、万物生成を司る水神だそうです。

 滝の左側に天狗の横顔にように見える「天狗岩」があるそうなのですが、今回もよくわかりませんでした。

 

さて、亀の井と霊亀の滝を訪ねた後は、また先ほどの廊下の下をくぐり、拝殿の南へ向かいます。

 

拝殿の横には「樽うらない」があります。おもちゃの弓矢で樽を狙い打って運試しです。樽の真ん中には穴が開いていて鉄板が貼ってあるので、命中すると大きな音が出ます。

樽うらないの奥にある神輿庫前にはたくさんの奉納酒樽がずらり。京都はもとより全国のお酒が集まります。松尾大社を創建した秦氏は、この周辺の土地の開拓だけでなく、農業など各種産業にも従事し、その生業のひとつが「酒造り」などの醸造です。ご祭神の大山咋神(おおやまぐいのかみ)は「醸造祖神」として崇められ、平安時代以来、お酒をはじめ味噌や醤油、お酢など醸造に関わる方から篤く信仰されています。

 

樽うらないの横にある社務所では御朱印やお守り、お札やおみくじなどを授けていただけます。

お正月に売り切れだった白虎みくじが授与再開されているということで、私も引いてみると…なんと「大吉」!

先日の平安神宮でも大吉にあたる「満開」を引きましたし、我ながらすごいくじ運です。ここで運を使い果たしているかも…?

「初めは危ない谷の小川の橋を渡るような心配事があるが驚き迷うことはありません。後には何もかも平和に収まります。全て小さいことも用心してすればよろしい」とのこと。大吉だからと慢心せずに、小さいことも用心して事にあたりたいと思います。

 

松尾大社は京都でも最も古い神社の一つで、観光客もさほど多くは無く派手さはありません。しかし山吹の咲き乱れるこの時期は、境内の至るところで黄金色の花々に出会うことが出来、とりわけ華やかに彩られます。今年の山吹の時期は終わりましたが、桜が終わった4月中旬頃が見ごろとなりますので、その季節に一度訪れてみてはいかがでしょうか。