京都を代表する花街 祇園 花見小路の南端に位置する建仁寺は、国宝 風神雷神図屏風や法堂の天井を彩る「双竜図」などで有名ですが、この建仁寺の塔頭寺院である両足院の境内に毘沙門天をまつるお堂があります。寅年にちなみ、毘沙門天の使い 虎のモチーフが境内のあちこちで見られるという両足院をご紹介します。
両足院の場所
両足院の行き方
電車で
・京阪「祇園四条」駅下車 東へ信号二つ目、花見小路南へ突き当り徒歩7分
・阪急「京都河原町」駅下車 徒歩10分
市バスで
JR京都駅より市バス 206系統、100系統
・「四条京阪」下車 大和大路通を南へ5分
・「東山安井」下車 安井通を西へ徒歩2~3分
・「南座前」下車 徒歩10分
・「祇園」下車 徒歩10分
建仁寺への行き方は以下で詳しくご紹介しています↓
今回のスタートは建仁寺の北門です。
さっそく中へ入って行きます。
観光客で賑わう花見小路から一変、京都最古の禅寺らしい凛とした空気が漂います。
道なりに右へ曲がります。
先ほどの道を右へ曲がると左前方に鐘楼があります。この鐘楼の前を左へ曲がります。
両足院の新春特別公開の案内板です。「虎みくじなくなりました」とあります。松尾大社の虎みくじも売り切れでしたが、ここでも虎みくじが人気のようです。
案内板に従って進むと、前方左手が両足院の塀です。正面の石畳の小道を進みます。
小道を10m余り進むともう両足院の入口です。門前に「毘沙門天王」の石碑があります。
毘沙門天堂を護る虎たち
こじんまりとした山門を入るとすぐ左手にあるのが「毘沙門天堂」です。
毘沙門天とは、仏道を歩む修行僧を守護する神の一人です。両足院の毘沙門天像は、鞍馬寺でお祀りされている毘沙門天像の内から出てきた胎内仏と呼ばれる仏像です。
戦国時代 比叡山が織田信長によって焼き討ちにあった際、鞍馬の僧が尊像の安全を危惧し、疎開させたそうです。
黒田長政がこの尊像を内兜に収めて関ケ原の合戦で活躍し勝利を収めたと言われており、そのあと尊像は代々黒田家に信仰されましたが、明治維新で両足院に寄進されました。
それ以降、勝利の神として商売繫盛、合格祈願、誓願成就の他、戦前は祇園の芸妓、舞妓が「芸事が上達しますように」「良い旦那さんが見つかりますように」などとお参りしたことから「祇園の縁結び」として良縁成就のご利益があるとも言われています。
両足院は通常非公開ですが、毘沙門天堂は年中参拝することが出来ます。新春特別公開(1月1日~16日)では、お堂の扉を開放し、間近に毘沙門天像を参拝できます。機会があれば、勝利の神 毘沙門天像の力強い堂々としたお姿を拝んでみてください。
ところで、毘沙門天堂を守護する狛犬ならぬ狛虎は、狛犬同様、右手には口を開いた「阿(あ)」、左手には口を閉じた「吽(うん)」の像になります。きりりとした表情に堂々とした姿の虎ですね。
なぜ、両足院の毘沙門天堂では狛犬ではなく狛虎が護っているかというと、これには諸説あるようです。
一つは信貴山朝護孫子寺(しぎさんちょうごそんしじ)~全国の毘沙門天を祀る社の総本山~にまつわる言い伝え。聖徳太子が朝敵物部守屋を討伐する際に、寅の年、寅の月、寅の日、寅の刻に毘沙門天が信貴山に出現し、必勝の秘法を授けてくれたことから、聖徳太子はこの山に毘沙門天を本尊として朝護孫子寺を創建し、虎は毘沙門天のお使いとされているという説。
もう一つは、鞍馬寺の開祖 鑑禎上人が霊夢で白馬に導かれて鞍馬山に登り、鬼女に襲われたところを毘沙門天に助けられたのが寅の月、寅の日、寅の刻だったので、鑑禎上人は草庵を結び、毘沙門天を祀ったとされる説。そして寅にちなんで、鞍馬寺の仁王門や本殿金堂の前には神使として対の虎の像があります。
このような言い伝えから、虎は毘沙門天のお使いとされ、毘沙門天を祀る寺社には虎もお祀りされていることが多いようです。
ちなみに百足(ムカデ)も古くから毘沙門天のお使いとされていて、先の朝護孫子寺の本堂の扁額などにもムカデが描かれているそうです。両足院毘沙門天堂の手水舎に掲げられた提灯にもムカデが!
これは「たくさんの足(百足)のうち、たった一足の歩調や歩く方向が違っても前に進むのに支障が出る。困難や問題に向かうには皆が心を一つにして当たるように」という仏教の教えに基づいていると言われているそうです。
再び虎にもどります。写真撮影はできなかったのですが、毘沙門天堂に安置されている毘沙門天像の前にも、ユーモラスな表情の虎の像が二体鎮座していました。大きな目にちょっとシナっとした体つきが、なぜかディズニーのキャラクターを思い浮かべたのは私だけでしょうか…?
香炉の左右にも阿吽の虎が。すべり落ちないように必死でしがみついているように見え、思わず笑ってしまいました。そしてちょっとわかりにくいですが、この香炉の手前にも百足の彫刻が施されています。
よーく見ると、灯篭の装飾にも虎のレリーフが。これはトラというより白虎という説もあるようです。白虎は虎という字を使いますが、中国の伝説上の神獣で、西方を守護しています。松尾大社の今年の大絵馬にも描いてありましたね。
虎の絵の絵馬が鈴なりになっていて、参拝者の願いの強さを感じました。
その他、可愛らしい虎みくじや虎の絵の入った御朱印、お守りなどは「両足院オンラインお授け所」のサイトからも購入できます。
https://ryosokuin.myshopify.com/
虎は毘沙門天の使いとして一晩で千里を走ると言われ、毘沙門天の代わりに人々の願いを聞いて回るそうです。
また、毘沙門天を祀る寺院の縁日は寅の日で、よく願い事が叶う日であり、寅の年の寅の日は最強だそうです。寅の日に毘沙門天を祀る寺院にお参りすれば、寅の日詣でと言って、とても大きな力が頂けるのだそうです。
そして私がこの両足院毘沙門天堂をお参りしたのが、なんと寅年の寅の日でした。天気が良かったのでたまたま伺ったのですが、後で調べたら最強の日だということで、今年はきっと良い一年になりそうな予感がします。
両足院の毘沙門天堂は広い建仁寺の中でもこじんまりとして、拝観料も無料でお参りできます。
周辺には花見小路、八坂神社や高台寺、安井金毘羅宮なども徒歩圏内にありますので、寅年の運気アップも兼ねて足を運んでみてはいかがでしょうか。
次回は両足院の歴史や冬でも美しい庭園、方丈襖絵などの新春特別公開等をご紹介します。
近くの八坂神社についてはこちらで詳しくご紹介しています。↓