京都でも有数の紅葉の名所、嵐山。そのランドマーク的存在である渡月橋から保津川沿いを川上へ歩くこと約1キロ。そこには土産物屋や飲食店の立ち並ぶ観光地嵐山とは全く別の世界が広がります。12月に入り、紅葉のピークは過ぎましたが、まだまだ錦秋の名にふさわしい風景が見られるのが大悲閣千光寺です。
今回は、目的地までの行きかえりの道中も素晴らしい風景が楽しめる、超穴場紅葉スポット 千光寺をご紹介します。
大悲閣 千光寺の場所
大悲閣 千光寺の行き方
京福電気鉄道嵐山駅より徒歩19分
JR嵯峨嵐山駅より徒歩27分
阪急嵐山駅より徒歩20分
京福嵐山駅から千光寺までの行き方は以下のブログで詳しくご紹介しています↓
今回のスタートは嵐山の渡月橋です。
11月末の嵐山は紅葉のピークで、平日でも観光客でごった返していました。
渡月橋を南へ渡ります。
渡月橋を南へ渡り、渡月小橋も渡って西(右)へ曲がると「大悲閣(千光寺)」の看板があります。そのまま川沿いを西へ進みます。
左手に嵐山モンキーパークの入口があります。
このまま西へ進みます。
保津川にはたくさんのボートが停まっています。緊急事態宣言中は営業休止だったので、カバーが掛かっていましたが、今は営業再開されているので、乗船客を待って川岸で待機しています。
保津川の南側の道から対岸の亀山公園入口付近を眺めると、今まさに見ごろの紅葉が川面に映り、絵画のような美しさです。
左手に小さな滝があります。立て看板によると「戸無瀬の滝」というそうです。
平安時代から多くの和歌に詠まれた滝で、江戸時代には嵐山の名所として「都名所図会」や歌川(安藤)広重の「六十余州名所図会」などにも描かれているそうです。現在は小さい滝ですが、昔は対岸からも見えるほどの大きな滝だったそうです。
その後、江戸時代初めに角倉了以によって行われた保津川の開削工事により、その多くが削り去られたと言われています。
現在はチョロチョロとしか水が流れていませんが、時代の流れには逆らえないですね。
更に進むと、水の色が深い碧色になってきました。紅葉とのコントラストがえも言われぬ美しさです。
また水の青さが変わりました。この辺りを嵐峡と言うのでしょうか。
屋形船が通りかかりました。何とも風流な眺めです。
どこを切り取っても絵になる景色です。
渡月小橋を渡ってから西へ向かい、アップダウンもある道を歩くこと1㎞ほどで、星のや京都の入口に突き当たります。その隣が大悲閣千光寺への参道になります。
大悲閣千光寺とは
大悲閣千光寺は、江戸時代の豪商 角倉了以(すみのくらりょうい)が、大堰川を開削する工事で亡くなった人々を弔うために、嵯峨の清凉寺近くにあった千光寺を移転し建立させたものです。源信の作と言われる千手観音菩薩像を本尊としています。境内にある大悲閣は、保津川の切り立った岩肌に建つ観音堂で、嵐峡の絶景を眺めることが出来ます。
ゆるやかに続く石段を登っていきましょう。
つづれ織りの石段が続きます。
千光寺の郵便ポストと掲示板。英語の得意なご住職が英文でも千光寺や仏教についての解説文を書いておられるのでしょうか。コロナ前は日本人より外国人参拝客のほうが多かったそうです。
更に登っていきます。
10分ほど登って行くと千光寺の山門です。拝観料は400円です。
山門の向こうに鐘が見えます。
鐘は一人三回まで無料で撞けます。撞いてみると厳かな音色が山々に響きわたります。
この辺りから見上げると、断崖に張り出したように客殿があります。これが「大悲閣」と呼ばれているものです。
さっそく拝観料を払い、崖の上に建つ客殿の中へ入っていきます。
客殿の中は畳の部屋になっていて、様々な資料が並び、気に入った資料のコピーは自由に持ち帰って良いそうです。そして、客殿の奥には嵐山の絶景が広がっています。
千光寺側のカエデの紅葉は終わりかけていましたが、保津峡と向かい側の小倉山の紅葉はまだ十分楽しめました。遠く霞んでいるのは比叡山で、京都市内が一望できます。
少し角度を変えて撮影。光の当たり具合で、また違った色合いに見えます。
再び畳の部屋です。写真下の方に長~いそろばんがあるのが分かりますか?
255桁のそろばんで4m以上あるそうです。白いパネルのようなものに「一十百千万億兆京…」と書いてあるもののすぐ奥です。
窓際に無造作に置かれているのはそろばんで作られた三重塔です。
京都でそろばん関係の物品を製造販売されている方から、先ほどの長~いそろばんと共に寄贈されたそうです。
なぜ、千光寺にそろばんが寄贈されたかと言うと…
江戸時代初期の書物に「塵劫記」という、そろばんの基本的な計算や掛け算、割り算を図入りでわかりやすく解説した本がありました。商業が発展してきたこの時代に、金、銀、銅など貨幣の流通に伴い、商人が計算が速く正確にできるそろばんを欲し学びたがっていたため、この本は大ベストセラーとなりました。
この本の著者吉田光由は、この大悲閣を作った角倉了以の一族で、了以の子 素案に算法統宗を学んだと言われており、角倉一族を祀っているのが大悲閣千光寺なのです。
そんな関係で、この千光寺は「そろばん寺」とも呼ばれており、角倉了以400回忌に先ほどご紹介したそろばんと三重塔が寄贈されたのでした。
大悲閣からの眺めを満喫したあと、ご本尊の千手菩薩観音像と、角倉了以像をお参りし、境内にある庵(?)で作業をされていたご住職に少しお話を伺いました。
ご住職は元は天龍寺で修行をされていましたが、この千光寺の元住職ご夫婦が高齢となり跡継ぎもいないということで、知人の紹介により千光寺を継がれたそうです。
気さくなご住職は人気者で、参拝者からしばしば声をかけられていました。私もお話させていただき楽しかったです。ありがとうございました。
看板犬のすみれちゃん。寒くなってきたので、参拝者から暖かい上着?をプレゼントされたそうです。この日も暖を求めて日差しの温かい場所で日向ぼっこしていました。もう13歳(うろ覚え?)のおばあちゃん犬で、目も鼻もだいぶ弱っていてアレルギーもあって、よくくしゃみしてますよ、とご住職に教えていただきました。日向ぼっこしているすみれちゃんを見ていると、それだけで穏やかな気分になり癒されるので、どうか元気で長生きしてほしいと願うばかりです。
最後に、受付スタッフの女性の方に、「大悲閣の写真をきれいに撮りたいのですが、どこから撮ったらいいですか?」とお尋ねしました。「住職はよく受付付近から大悲閣越しに奥の小倉山と一緒に写真を撮っていますよ」と教えてくださいました。
教えてもらったアングルがこちら。
同じく受付付近から、大悲閣とは反対側の紅葉。
千光寺の裏手に大きなイチョウの木があり、遠目に見てもわかるほど黄金色に色づくそうですが、私が訪ねた前日の風でほとんど散ってしまいました。来年こそは、その大イチョウと紅葉のベストタイミングを狙って伺いたいと思います。
帰り道、石段の傍らに小さな観音様を発見。その時は気づかなかったのですが、後で写真をチェックしたら、観音様の横に小さなお地蔵様が。クールな表情の観音様に対して、お地蔵様の笑顔が全力な感じで、その可愛らしさにこちらまで笑顔になりました。
石段を下り、また川沿いの道を渡月橋へ向かって帰ります。
屋形船に遭遇。船からの嵐峡の紅葉も見てみたいですね。
写真奥に見えるのは渡月橋です。
いつもテレビなどで紹介されるのと反対側からの風景も、また違った趣があります。
紅葉のピークは過ぎていましたが、途中の保津川沿いの景色も楽しめたお散歩でした。石段や落ち葉もありますので、必ず歩きやすい靴で行かれることをお勧めします。
おなじみの観光地嵐山とは全く違う、素晴らしい眺めを満喫できます。
嵯峨嵐山周辺には他にもたくさんの紅葉スポットがあります。
以下のブログでご紹介しています。
天龍寺の西にある絶景スポット亀山公園↓
小倉山のふもとの日本で唯一の髪の神社 御髪神社↓
奥嵯峨の竹林に佇む祇王寺↓
奥嵯峨の紅葉の名所 二尊院↓