小倉百人一首にも詠まれた小倉山のふもとにひっそりと佇む、日本で唯一の髪に携わる業の始祖をご祭神とする神社~御髪神社(みかみじんじゃ)があります。
小さな神社ですが、髪に携わる理容、美容(化粧品、洗髪剤、育毛剤、カツラ等)の会社の発展祈願だけでなく、理容・美容師の国家試験合格祈願、一般の頭髪・育毛の発毛祈願はもとより頭髪から頭にちなんで各種試験合格など、多くの人々が全国から参拝に訪れます。嵯峨野の竹林の近くのちょっと奥まった場所にあり、何となく神秘的な雰囲気もあるこの御髪神社をご紹介します。
●御髪神社の場所
●御髪神社の行き方
・阪急嵐山線「嵐山駅」下車 徒歩20分
今回は京福嵐山駅からスタートします。
京都府の蔓延防止等重点措置が解除されて数日後です。蔓延防止期間は観光客もまばらだった嵐山ですが、修学旅行生や若者のグループなどの観光客で賑わいを取り戻しつつありました。
梅雨明け間近の不安定な天候でしたが、ちょうど雨が上がったタイミングを見計らって出かけました。目的地の御髪神社の前の小倉池のハスの花が見ごろかな~と思っていたのですが、ハスつながりで、ふと天龍寺にもハスの池があったかなと思い出し、急遽京福嵐山駅の向かいの天龍寺へ立ち寄ってみました。
天龍寺については以下の記事で詳しく紹介しています↓
言わずと知れた世界文化遺産天龍寺は、京福嵐山駅の向かい側にあります。
こちらの入口から、まっすぐ中へ入っていくと、右手にハスの池があります。広い天龍寺の中でも、ハスの咲いている放生池(ほうじょういけ)は無料で見ることが出来るエリアです。
思った通り、ハスの花が満開です。池の周囲は柵で囲まれていますが、柵の合間からでも、このような美しい光景を見ることが出来ます。池の周りには、私と同様にハスの写真を撮影されている方が数名おられました。ハスの花は夜明けから咲き始め、午後には元気がなくなるので、午前中のなるべく早い時間に訪ねるのがおすすめです。
泥の中から、美しい花を咲かせるハスを悟りに見立て、ハスはお寺には欠かせない花と言われています。そんな言われは知らなくても、咲き誇るハスの花の池に極楽浄土を思い浮かべる方は多いことと思います。
ところで、同じように水辺に咲く花にスイレンもありますよね。ハス(蓮)とスイレン(睡蓮)、どちらも蓮の字が使われていて、私もどっちがどっちだったかな?と疑問に思ったので調べてみました。
ちなみにこちらはスイレンです。
ハスもスイレンも水生植物で、水の底や泥に根を張り、水面(水上)に葉と花を展開し、初夏から夏に咲きます。午前中に満開になり、午後は閉じてしまう種が多いです。
本当によく似ていますよね~。
見分けるポイントは
①ハスは、ヤマモガシ目ハス科の挺水(ていすい)植物で、水面から葉を立ち上がらせる植物。花が水面より上の方に咲き、葉も水面より上へと立ち上がらせている。
花の花弁は、幅広で丸みを帯びて、お椀のような形で花の中央に大きな花托がある。
葉の形は円形で切れ込みが無い。
②スイレンは、スイレン目スイレン科に含まれる浮葉性(ふようせい)植物で、水面に葉を浮かべる植物。花が水面に咲き、葉も水面に浮かんでいる。花弁は細長くシャープな形。葉の形は円形で切れ込みがある。
このような違いがあります。ざっくり言うと「花も葉も水面より高い位置にあるのがハス、葉とともに水面に浮かんでいるように花が咲くのがスイレン」ということでしょうか。ちなみに熱帯性のスイレンは水面から突き出るものもあるそうです…ややこしいですね(笑)
さて、天龍寺のハスの鑑賞を終え、いよいよ目的の御髪神社へと向かいます。
もう一度天龍寺の入口に戻り、天龍寺と京福嵐山駅の間の長辻通りを北(左)へ向かいます。
そのまま道なりに200mほど進むと、竹林へ向かう道の入口に出ますので、スヌーピーショコラ京都・嵐山の横を西(左)へ曲がります。
有名な嵯峨野の竹林を奥へと進みます。
突き当たりを北(右)へ曲がります。
道なりに進むと野宮神社に出ます。今回は野宮神社はお参りせず、手前の道を西(左)へ曲がります。
曲がった先の道は少し上り坂になっています。この道を更に進みます。
道なりに進むと、左手に天龍寺の北門があります。先ほどの京福嵐山駅の前の入口のちょうど反対側にあたります。この道をもう少し先へ進みます。
深い竹林の坂道を登って行きます。
坂を上り切ると、突き当りです。右前に大河内山荘があります。この道を右へ曲がります。
右へ曲がると左手が大河内山荘ですが、今回は大河内山荘はパスして右手の道を進みます。
道なりに進むと今度は下り坂です。左手に立て看板があります。落柿舎方面(右)へ進みます。
坂道を下っていくと、右手にフェンスがあり、その向こうは嵯峨野観光鉄道「トロッコ嵐山駅」です。
フェンスの向こうに、小さな「トロッコ嵐山駅」が見えます。
このまま坂道を下ります。
坂を下り切ると、左手に御髪神社の赤い幟が見えました。左へ曲がります。
御髪神社の木の立て札によると、「髪は身体の最上位にあって造化の神より賜った美しい自然の冠」だそうで、その髪による恩恵に感謝する気持ちから生まれた神社だそうです。
先ほどの立て札があった橋から、御髪神社の前にある池を見た写真です。
池一面にハスの花が咲き乱れ、雨上がりで瑞々しい木々の緑のグラデーションの中で、神秘的な美しさでした。
ハスの池を挟んで向かい側から御髪神社を眺めるとこんな感じです。神社の方が境内を掃除されていました。
ハスの池はかなり広いです。幅100メートルほどありそうです。
先ほどの橋を渡って右に曲がるともう神社です。神社側から池の周りに柵などは無いので、写真撮影に夢中になりすぎて、池に落ちないよう注意しましょう。
境内の横には山へ向かって石段が伸びています。この石段を登ると、小倉山への登り口に出ます。朝から小倉山へ登って降りて来られた方に何人かすれ違いました。小倉山はこちらから2~30分で登れる低い山ですが、山の上からの京都市内の眺めはなかなかのものです。初日の出を拝みに登られる方も多数おられるそうです。私はご来光はまだ拝んだことが無いのですが、いつか機会があれば見てみたいです。
さあ、いよいよ御髪神社をお参りしましょう。と言っても、小さな小さな神社です。
鳥居と社務所、小さな本殿、髪塚、毘沙門天ぐらいしかありません。
立て看板に由緒書きがあります。
ご祭神は大化の改新でお馴染みの藤原鎌足の末孫、藤原采女亮政之(ふじわらうねめのすけまさゆき)です。
亀山市天皇の御代(1259~1274)、皇居の宝物守護の武士であった藤原基春が、紛失した刀を探すため下関に居を構えました。その時、三男の政之が生活の糧を得るため、床屋で婦女の髪結いをしていて、これが我が国の髪結い職の祖と言われているそうです。
明治39年には長野の善光寺に開祖として政之公の墓碑も建立され、昭和の初めまで、全国の理・美容業者は、敬髪と始祖のご冥福をお祈りするため、政之公のご命日の17日を毎月の定休日としていたのです。
御髪神社は、政之公を祭神として、御髪大神と称え祀り、『髪』すなわち『神』に通ずるものとして、基晴卿、政之公と最も縁の深い亀山天皇御陵地の小倉山山麓に建立され、主神の政之公の御神像をご本尊として祀っておられるそうです。
昭和36年(1961)、京都市の理美容業界関係者によって創建された、京都では比較的新しい神社です。
髪塚です。
髪は人身の最上位にあって、造化の神より賜った 美しい自然の冠であると同時に生前に残し得る唯一の分身として、参拝の代わりに髪の毛を数本神主さんに切ってもらって献納します。献納された髪の毛は、境内の髪塚に納められます。この髪の毛は毎日神社で祈祷され、永遠にここに保管されるそうです。
それではお参りしましょう。私は献髪はしませんでしたが、健康な髪でいられるようよくお願いしておきました。
社務所の側面の壁に沢山の絵馬が。
毛髪の悩みを抱えたタレント達の心の叫びが読み取れます。
別の側面には、理容師や美容師の国家試験合格祈願の絵馬がこれまた多数奉納されていました。
アートネイチャーやリーブ21、スカルプDなど毛髪関連の会社の玉垣が並びます。さすが全国で唯一の髪専門の神社です。
社務所では様々なお守りや絵馬が授けられます。ただし、このご時世、遠方の方で直接参拝することが難しい方のために、お守りは御髪神社の公式サイトから注文することも可能です。ご関心のある方は一度公式サイトをご確認ください。
私が参拝している間にも、数名の参拝者がポツリポツリとですがやって来られました。その中には美容関係者の方かな?と思われるような、おしゃれないで立ちの方も見かけられました。嵐山からほど近いとは言うものの、かなり奥まった場所にあるにも関わらず、これだけ多くの人の信仰を集めているのは、やはり日本で唯一の髪の神社ということからなのでしょう。
理美容関係の職業の方以外でも、髪の健康が気になる方、いつまでも美しい髪でいたい方は、一度この御髪神社を訪れてみられてはいかがでしょうか。ハスの花の見ごろは夏ですが、秋の紅葉も美しいですし、静かな自然と一体化したような独特の空気を感じられるおすすめスポットです。
今回は京福嵐山駅から、天龍寺へ寄り道しつつ竹林を通り抜けて、徒歩で約50分ほどでした。途中坂道もありますので、歩きやすい靴でお越しください。
嵐山周辺のおすすめスポットは以下のブログをご覧ください。
小倉山の隣の亀山にある亀山公園
保津川をはさんで亀山公園の向かい側の断崖に建つ大悲閣 千光寺