瀧尾神社は京阪東福寺駅から北へ徒歩3分ほどのところにあります。小さな神社ですが、江戸時代の彫刻家による木彫りの数々が素晴らしく、特に拝殿の天井に据えられた木彫りの龍は全長8mと他に類を見ない巨大なものです。辰年にちなみ、この素晴らしい龍を一目見ようと瀧尾神社を訪ねました。
- 瀧尾神社の場所
- 瀧尾神社の行き方
- 東福寺駅から瀧尾神社への行き方
- 瀧尾神社とは
- 瀧尾神社と大丸
- 拝殿から見守る木彫りの龍
- 瀧尾神社の龍と祇園祭の大船鉾
- 本殿周辺にも見事な彫刻の数々が
- 瀧尾神社の摂社末社
瀧尾神社の場所
瀧尾神社の行き方
東福寺駅から瀧尾神社への行き方
今回のスタートは京阪電鉄東福寺駅です。JR東福寺駅で降りても、京阪の改札への連絡路がありますので、京阪の改札口を目指してください。
改札を出たら、ファミリーマートの角を北(左)へ曲がります。
北を向いた所です。この道を140mほど進みます。
140mほど進むと右手に瀧尾神社が見えてきますので交差点を右へ曲がります。
瀧尾神社に到着です。
瀧尾神社とは
創建年代は不詳ですが、平安末期に書かれた『源平盛衰記』には「武鵜ノ社(たけうのやしろ)」という記述があることから、この頃には存在していたようです。応仁の乱により焼失し、日吉坂に移転した後、天正14年(1586)に豊臣秀吉が方広寺大仏殿を建立したことに伴って現在地に遷座しました。その後宝永年間に江戸幕府の命令によって改築され、社号も現在の「瀧尾神社」と改称しました。
現在の社殿は、江戸時代後期の天保10年(1837)から翌11年にかけ、大丸の創業家である下村家により整備されました。
主祭神は大己貴命(おおむなちのみこと)で他に大黒天(大国主命)、弁財天、毘沙門天の三神も祀られています。
瀧尾神社と大丸
瀧尾神社の鳥居のすぐ後ろにある提灯に大丸の文字が見えますね。これは大丸の創業者である下村彦右衛門正啓が自宅のあった伏見京町から行商へ行く道中にあった神社に毎朝必ず参拝していたことに由来しているそうで、後に大丸が繁栄したことから代々下村家より崇拝されてきました。天保10年から翌年にかけて、下村家が2500両(現在の貨幣価値で約5億円!)をかけて本殿、拝殿、手水舎、絵馬舎が整備されました。
境内南西側にある絵馬舎には、丸に大の字をあしらった大丸ののれんの掛かった かつての店舗の絵が架けられていました。
拝殿から見守る木彫りの龍
鳥居をくぐってすぐ目の前にあるのが拝殿です。この拝殿をはじめ、境内奥の本殿や幣殿、拝所、回廊はそれぞれ京都市指定有形文化財に指定されています。
瀧尾神社の一番の目玉は、何といってもこの拝殿の天井にある木彫りの龍です。お寺に龍の天井画があるところは、京都でも建仁寺や大徳寺、妙心寺などが有名ですが、天井に木彫りの龍というのは珍しいのではないでしょうか。
拝殿の上まで上がって間近に木彫りの龍を拝観できるのは当初1月8日まででしたが、1月末まで延長されたと聞き、一月末に拝観してきました。その後更に特別拝観が延長され、2月末までになっているようです。
その木彫りの龍がこちらです。
江戸時代後期の彫刻師である九山新太郎が制作した全長8mにも及ぶ木彫りの龍は、拝殿の天井いっぱいに長い体をぐるりと這わせ、今にも動き出しそうで迫力満点です。
角度を変え、龍の顔付近をアップにしてみました。龍が持っているという金の宝珠も見えました。ギョロリとした目は生き生きとして、長く伸びたひげも躍動感があります。
もともとの木の木目を生かして、龍の鱗の質感がリアルに表現されています。
この木彫りの龍があまりに躍動感があるため、当時は「龍が夜な夜な拝殿を抜け出し、瀧尾神社の近くを流れる川に水を飲みに行く」と恐れられたそうです。困った神社は龍が抜け出せないように、拝殿の天井に金網が張られたという逸話もあるんだとか。
現在、その川は暗渠化されているからか、龍が抜け出す心配は無くなったようで、天井に金網も張られていません。
瀧尾神社の龍と祇園祭の大船鉾
この木彫りの龍を制作した彫物師の九山家は当主が代々九山新之丞を名乗り、その一派は祇園祭に登場する大船鉾の龍も手掛けたとされています。禁門の変で焼失した大船鉾を2016年に再現した際には、現・九山新之丞が船首の龍頭のモデルとして瀧尾神社の龍を参考にしたそうです。
そんな深い関係もあってか、令和5年の祇園祭では瀧尾神社の佐々貴宮司と、瀧尾神社の維持奉賛会である誠龍会の奥田会長が大船鉾を先導したという写真が、
【公式】瀧尾神社 誠龍会 京都にありました。
本殿周辺にも見事な彫刻の数々が
瀧尾神社の本殿は、貴船神社奥院旧殿を移築したものだそうです。この貴船神社のご祭神である高龗神(たかおかみのかみ)は水を司る龍神ということで、龍の彫刻がつくられたり、瀧尾という社名が龍を連想されるのも、そのようなつながりがあるのかもしれませんね。
さて、瀧尾神社は龍の木彫りが有名ですが、本殿やその周辺にも、精密に彫られた見事な彫刻が多く見られます。
本殿を取り囲む透塀の上部には、十二支の像が彫られています。探して見て回るのも楽しいですね。龍やトラの目には玉眼が用いられています。薄暗い中で、瞳が輝いていて、まるで生きているかのようです。
ネズミとウシ
トラとウサギ
龍とヘビ
ウマとヒツジ
サルとニワトリ
イヌとイノシシ
本殿の拝所にもゾウや龍、様々な鳥などたくさんの動物の木彫りで埋め尽くされ、見ていて飽きることがありませんでした。
瀧尾神社の摂社末社
瀧尾神社の境内には摂社末社もあります。
本殿の西側には三嶋神社があります。ご祭神は大山祇命、木之花咲耶姫、瓊瓊杵尊をお祀りしています。例年10月には三嶋神社の眷属(神のお使い)がウナギとされているため、三嶋神社の祈願所で鰻放生大祭が行われるそうです。
三嶋神社の更に西奥には、愛宕神社・大丸繁盛稲荷・金刀比羅宮・瀧尾天満宮が祀られています。
瀧尾神社は街中にある小さな神社ですが、辰年の今年は木彫りの龍を目当てに多くの参拝者で賑わっていました。私が参拝した折に、お守りを授けていただこうかと社務所を覗いてみると、なぜか摂社の三嶋神社のお守りやお札、おみくじばかりが置いてありました。瀧尾神社のお守り、おみくじ、お札等は全て完売したそうです(1月末現在)。今年の瀧尾神社の人気ぶりがうかがえました。
たくさんの参拝者の思いを受けた木彫りの龍の生き生きとした姿にあやかり、元気でパワフルな1年を過ごせたら良いなと思いました。
最寄りの東福寺駅からは、駅名の通り東福寺や泉涌寺なども徒歩圏内にあります。是非瀧尾神社と一緒にお参りください。
東福寺については以下で詳しくご紹介しています。