京都五山そして鎌倉五山の上に置かれる別格扱いの寺院である南禅寺には、国宝の方丈を始め、重要文化財の三門、インスタ映え間違い無しの水路閣など見どころ満載で、一年中観光客が絶えません。そんな南禅寺にあって、ほとんど人が訪れない秘密のスポットがありました。今回は、気功師のガイドさんの案内で、氣の変化を感じながら南禅寺の奥の奥にあるパワースポットを訪ねました。
前回のブログでは、蹴上駅から南禅寺までの道のりと、南禅寺の三門から水路閣までをご紹介しました。このブログでは、いよいよ秘密のパワースポット、最勝院の奥の院へと向かいます。
このツアーは2023.10.28に実施されました。ツアーの内容は開催時期によって変更される可能性があります。また、あくまで私個人の感想であることをご了承ください。
今回は「まいまい京都」が企画する「気功師といく南禅寺 秘密のパワースポット 水と岩が織り成す聖域へ~」というツアーに参加しました。「まいまい」とは「うろうろする」という意味の京ことばで、「まいまい京都」では、600人を超える各分野のスペシャリストが独自の視点でガイドする京都や近郊のミニツアーを多数実施されています。
南禅寺最勝院の場所
南禅寺の行き方
電車で
バスで
・京都駅から5号系統で「東天王町」また「南禅寺・永観堂」下車 徒歩約10分
・四条河原町から5,32,203号系統で「東天王町」下車 徒歩約10分
最寄りの地下鉄蹴上駅から南禅寺までの行き方は以下で詳しくご紹介しています。
このツアーのガイドは長根あきさんです。
長根さんは気功師で、北海道出身。幼少の頃よりアイヌの物語に惹かれ、1993年よりアイヌ民族に伝わる楽器・ムックリの演奏を始め、北海道ムックリ大会で優勝。2004年に京都へ移住され、気功を取り入れた暮らしを始められます。各地で気功教室を主催するなど、活動は多岐に渡ります。
水路閣から最勝院へ
南禅寺の奥にあるフォトスポット水路閣をくぐり、水路添いの坂道を東へ上っていきます。
70m程登っていくと、最勝院に出ます。
最勝院
この辺りから更に奥の一帯は、鎌倉時代頃から「神仙佳境」と呼ばれ霊地として広く世間に知られていました。摂政関白、九条家の子であり、幼くして仏門に入った道智(どうち)は、比叡山延暦寺で天台密教を極め、園城寺(三井寺)管長や禅林寺(永観堂)住持を務めましたが、晩年は世をいとい、この地に隠棲されました。南禅寺の寺伝によると、この地は園城寺別院の最勝光院の所在地でありましたが、のちに同院は衰退、文永元年(1264)亀山天皇が母大宮院の御所として離宮禅林寺殿を造営。その禅林寺殿造営の二年後(1266)、道智は法力を使って白馬にまたがり、生身を天空に隠されたと伝えられています。馬のことを駒とも言うので、それ以来、道智は駒大僧正、最勝院の山中は駒ヶ滝と呼ばれるようになりました。
最勝院奥の院へ
最勝院の横を流れる川沿いに、更に山中へと上がっていきます。
水路閣周辺の賑わいが嘘のように、この辺りには日本人はほとんど上がってこないのですが、この山道は外国人向けの旅行サイトでは結構有名なようで、登山姿の外国人と時々出会いました。山道をたどって行くと、哲学の道や大文字山、山科などへ至るコースもあるそうです。
川沿いを1、2分歩いた辺りで長根さんが足を止め、これから行く場所について注意事項を話されました。
「ここまで来ると観光地という感じはちょっとしないですね。南禅寺はお寺なんですが、その奥の院のところは山岳修行の方たちが使っておられます。今から行くところは細い滝なんですが、滝行もできるようになっていて、実際に滝行をしている方がいたり、ほら貝を吹いている方がいることもあります。神聖な場所なので、私語は控えつつ修行されてる方がいるところにお邪魔させていただくという気持ちでここから歩いて行きたいと思います。」
最勝院と白馬にまたがって天に上った道智(駒大僧正)の話についても、詳しく話されました。その間にも、ほら貝の音が聞こえてきて、この地が昔から神聖な修行の場であり、そのような不思議な伝説もすんなりと受け入れられそうな空気を感じました。そして、コンクリートとは違う、ザクザクとした土や砂利からくる足の裏の感覚を味わいながら、黙々と山道を登っていきました。
先ほどのところから更に10分ほど登ると、目の前に急な階段が現れました。
拝殿と厨子宝殿
階段を上りきると、奥の院の拝殿があります。
その拝殿の奥に駒大僧正を祀った小さな厨子宝殿があります。ぼんぼりに天狗の葉うちわのモチーフが。
拝殿の左側には、駒ヶ滝地蔵大菩薩の祠もあります。
拝殿や駒大僧正の厨子宝殿を通り過ぎた所にある赤い手すりの橋を渡ります。
その先には石でゴツゴツした山道が。途中、「秋葉一尺坊」という烏天狗の石像もありました。
駒ヶ滝
更に階段を登った先に、細い一筋の滝があり、滝の横には大日大聖不動明王が祀られていて、滝には白い衣の方がおられました。
周辺の山からはほら貝の音色も聞こえてきて、このあたりが修行の場であることを実感しました。
そこから更にものすごく急な階段を登って行き、途中洞窟のような所もあり、もっと上へ登って行きます。登るのに必死で写真が撮れなかったので、下の写真は帰り道に下から見上げて撮りました。ロープを張ってあるあたりが急な階段で、その先が洞窟です。その時は洞窟の中を見なかったのですが、ネットの他の方の記事によると、将軍地蔵菩薩や厳島弁財天などが祀られているそうです。
小さな川が流れているので、そこに架かっている簡素な木の橋を渡ります。下の写真も帰り道に撮ったので、上から見た景色になります。
磐座
上の写真の手前、小石がゴロゴロする道なき道を更に上がって行くと、小川を挟んだ対岸に、巨大な石(磐座)があります。
この地は、鎌倉時代から霊地として「神仙佳境」と呼ばれていたそうです。この奥の院にある岩も、古代から信仰の対象だったのではないかと長根さんは言います。それは、この場所で感じられる氣や、今でも沢山の仏さまが祀られていて、人々が祈りを捧げていること、滝行の場となっていること、駒大僧正の伝承の地となっていることからも推測できるそうです。
最勝院の奥の院について調べるため、帰宅してから沢山のネットの情報を調べましたが、滝とその先の洞窟までは写真がありましたが、さすがにそれより先の情報は見つけることが出来ませんでした。まさに秘境と呼べるほどのパワースポットを目の前にして、私を始め他の参加者の方も、磐座の巨大さに圧倒され、ただただ息を飲んで見つめていました。
気功体験
長根さんのリードのもと、気功体験の始まりです。
参加者も、見よう見まねで長根さんの動きにならいます。水路閣の手前で見たねじりながら伸びる木をイメージしながら、ゆったりと体を動かしていきます。
そのあと、長根さんは持参されていたムックリ(アイヌ民族に伝わる口琴)を演奏されました。
参加者は目を瞑り、ムックリの響きに身をゆだねました。するとそれまで以上に周辺の鳥たちがさえずりを強めました。
数分ほどで長根さんのムックリの演奏が終わり、参加者はゆっくりと目を開きましたが、皆何となく夢から覚めたような不思議な感覚を味わっていたのではないでしょうか。普段私は霊感など全く感じないのですが、気功をすることで、他の場所とは違う氣の存在のようなものを体感することが出来た気がしました。それは、この土地がずっと昔から持っている強いパワーが私を後押ししてくれたのでは無いかと感じました。
そのあと10分ほど自由時間となり、磐座に彫られた大昔の観音像を見学したり、磐座の写真を撮ったりして思い思いに過ごしました。観音像はかなり古いもののようで、時間の経過とともに削れて見えにくくなっているそうで、磐座のすぐ横まで行って見ないとなかなか確認できないものでした。磐座のすぐ横まで行くには、人一人通るのがやっとの細い場所を上がっていかなければいけないので、時間の関係で私は傍まで行くことが出来ませんでした。それでも、参加者のうち数人はその観音像を確認できたようで「あれかな~?」「あ、わかった!」と声を上げておられました。こんな山深い場所にある巨大な岩に、一体だれがこのような観音像を彫ったのか…長根さんによると、今は一つぐらいしか観音像を確認できませんが、大昔はいくつも彫られていたようです。「神仙佳境」と呼ばれたこの地に、昔の人も自然のパワーを感じ、様々な祈りをこの磐座に捧げたのかもしれないということを、気功体験によってより実感できた時間でした。
大杉大神 ~みんなで育てるパワースポット
奥の院を後にして、また来た道をどんどん下って行くと、参道に一本の杉の巨木がありました。
大杉大神と書いてあり、臨済宗ですが、神仏習合の形がまだ残っているそうです。
この参道は、毎朝一般の方が掃除し火を灯しておられるそうです。10年ほど前はこの辺りは鬱蒼として一人で滝まで行くのも怖かったそうですが、今は有志の方が毎朝掃除されているお陰で、年々明るくすっきりといい感じになったとか。
パワースポットとは、パワーをいただきに行く場というよりも、パワーをいただきつつ返していく、パワーの循環をさせていくことで、さらに力を持ち輝きを増していくのではないか、と長根さんは話されました。
古代の人たちが、山の中にある大きな石を見て、神様が運んで来た石、またその石に神様が宿ると信じ、祀ってきた磐座。その磐座をパワースポットたらしめているのは、磐座を祀り、大切に守ってきた人々の信仰心なのですね。そしてその人々の信仰心(氣)が、磐座やその周辺の土地が持つパワー(氣)をより強め、さらなるパワーをもつものへと成長させていく…奥の院での気功で感じた不思議な氣はもちろんのこと、三門から南禅寺の境内へ入った時に感じた爽やかな空気も、何百年も人々がこの地にこめた祈りのパワーがそのようなものへと成長させたものだったのだと実感したひとときでした。
大杉大神から更に3分ほど川沿いを下って行くと、再び最勝院に戻って来ました。
今回はここまで。次回は長根さんのガイドで、南禅寺から少し歩いたカフェでの気功トークとアイヌの民族楽器を聞いた感想などをご紹介します。